離職率をどう見るか
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、ここ数年の離職率は15%前後になっています。しかし「学歴別卒業後3年以内離職率」を見ると、数字が大きく違ってきます。
若い人たちの離職率は高卒・短大卒で40%前後、大卒で30%前後です。10人採用しても、3年以内に3~4人が辞めていることになります。
「最近の若い人は根気がない」とか「他にやりたいことがあるんだろう」と言ってすませる問題ではありません。企業にとって離職率の高さは、人手不足に直結し、生産性などに影響します。また、採用コスト、人材育成コストが増すことになります。こういったことは、企業の存続にかかわる深刻な問題です。
ある有名企業に招かれた社長は、就任時その会社の離職率の高さを見て「危機感を覚えた」と述懐しています。離職率の高さは組織の生産性の低さを表すものであり、生産性の低い組織は淘汰されていくと考えたからです。
退職理由のタテマエとホンネ
多くの企業が離職率の低減に努め、担当者は退職を申し出た社員にその理由を聞き、退職を思いとどまるよう言葉を尽くしていることでしょう。
しかし、退職理由にはホンネとタテマエがあります。たとえば、「上司が自分の失敗を部下に押しつける」、これがホンネであっても、退職に際しては本当のところは伝えず、「キャリアアップのため」とか「家族の都合」といったことを話すでしょう。
厚生労働省の調査では、自己都合による離職の理由として男女ともに多いのは、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」「賃金が低かったから」「会社の将来に不安を感じたから」「能力・実績が正当に評価されないから」「人間関係がうまくいかなかったから」というものです。
この調査は厚生労働省が民間に委託して、離職者本人が調査票に記入する方法でまとめられたものです。ある程度、本当の離職理由が示されていると言えますが、「上司が自分の失敗を部下に押しつける」という生の声のほうが、直接に響くものでしょう。
インターネットを見ると「指示がコロコロ変わる」「話を聞いてくれない」「セクショナリズムがはびこっている」などの声が数多く載っています。離職率を低減させるためには、こうした生の声を敏感に感じ、すくい上げる仕組みが必要になるでしょう。
離職を防ぐためのポイント
離職を防ぐための方法として、ある企業は、退職者からのヒアリングに取り組みました。もちろん、多くの企業が退職希望者にその理由をたずねるでしょう。たとえば「一身上の都合」という理由の裏にどのようなホンネがあるか、というところまで聞こうとする企業も少なくないでしょう。
しかし、この企業は、直属の上司では本当の理由がわからない場合、その上の上司がヒアリングするというように、組織としてできるだけ本当の退職本当を知ることに努めました。
そして、その声を組織全体で共有し、どのような配慮があれば離職に至らずにすんだのかを検討し、そこに見いだされた課題に対応できるように策を講じました。
また、ある企業は社員採用後、面接官が採用した社員をチェックする取り組みを始めました。その社員が、きちんと仕事をしているかどうかをチェックするのではありません。その社員が生き生きと働いているかどうかを確認することが目的です。つまり、採用した人材の「従業員満足度」を確認しているわけです。
従業員満足度(Employee Satisfaction)は、勤務体制や給料だけではなく、福利厚生、職場風土、モチベーションなどを含め、その会社で働くことの満足度を言います。そして、従業員満足度の高い組織は生産性が高く、業績が向上するうえ、離職率も低くなります。
離職率が低い企業とは
社員が会社を辞める理由はさまざまですが、シンプルに言えば、会社に不満があるということです。退職を思いとどまらせるには、その不満を解消することが第一になります。しかし、何に対しどのような不満があるかがわからなければ、不満を解消する手だてが見つかりません。
すると、やはり重要になるのはコミュニケーションです。離職する社員の多くは、会社に対する不満を抱え込み、それが限界に達したとき離職を決意することになります。そうなる前に話を聞く、あるいは、不満を抱え込むことなく気軽に話せる組織である必要があります。
政府が進める「働き方改革」は現在のところ、長時間労働の是正、同一労働・同一賃金に話題が集中していますが、それは数値で表すことができ、わかりやすいからでしょう。
しかし、数値で測ることができないもの、つまり生き生きと働くことができる職場、従業員満足度の高い職場であることが企業にとっては、とても重要だと言えます。離職率の低い企業は、そうした職場づくりに積極的に取り組んでいます。離職に至る本当の理由を探ることが、離職率低減の手がかりとなります。
研修やセミナー/講演/キャリア面談/コーチング等、
全国出張いたします!お気軽にご相談ください!
HUGRES 内田ひとみ
ホームページ:企業向け https://www.hugres.co.jp/
Facebookページ更新中! https://www.facebook.com/hugres.co.jp/